パノラマ展望、日暮山

パノラマ展望、日暮山
日暮山からの光景

小沼と蓴菜沼の中間に日暮山があります。この山は昭和初期まで「小沼山」、または持ち主の名をとった「笠原山」と呼ばれていましたが、その後、この山に 登って、大沼や小沼、蓴菜沼、駒ヶ岳などの眺望を楽しんだ人たちがその美しさに我を忘れ、気がついてみると日暮れであったということから「ひぐらしやま」 といわれるようになりました。
大沼公園から国道5号線へ抜ける坂道を上る途中、少し行くと左手に登山口があります。車で頂上付近の駐車場まで行くことができますが、徒歩でも30分弱 で、小鳥のさえずりや緑の美しさを楽しむうちに頂上付近の駐車場に到着します。キャンピングカーで訪れ、日暮れはおろか朝まで過ごす人たちもいるほどで す。

そこから50メートルほど登ると、頂上の展望サイトに着きます。そこからは、駒ヶ岳の雄姿、裾野が広がり、その末は大沼、小沼。湖水に浮かぶ島々などの自然の眺望が楽しめます。

豊かな恵みのジュンサイ沼

豊かな恵みのジュンサイ沼

国道5号線へ出て、函館方向へ向かうとまもなく、右手に蓴菜沼へ降りて行く道があります。最初に目につくのは、明治14年9月、明治天皇北海道巡行の記念に建てられた「明治天皇行幸碑」です。
現在、周囲は園地として整備されており、明鏡止水と呼ばれる神秘の沼を静かに堪能できます。

さらに、湖畔につけられた遊歩道を歩いて行くと、小さな東屋の下にこんこんと湧きでる「御前水」と呼ばれる清水があります。冷たい清水は、口に含むとほんのりやわらかな味がします。

この沼には昔、ハクチョウが多く降り立ち、「白鳥の沼」といわれていました。
現在の名称になったのは、明治5年、北海道開拓使次官黒田清隆がこの地を視察した際のことです。次官は、この沼で良質のジユンサイが多く採れるということ を開き、「しからば、この沼を 『ジュンサイ沼』と称してはどうか」と言われ、以後そのように呼ばれるようになったといいます。

神秘の沼、蓴菜沼は恵みの沼でもあります。春四月、沼の氷が解け、雪解け水で沼が満々と張るころ、ワカサギが産卵のため湖岸にひしめき、大沼の漁師はそれ を捕獲して採卵し、人工孵化を行うとともに、筏焼きに精をだします。やがて、ヌマエビの漁期を迎え、さらにフナ漁へと続きます。小型のフナは甘露煮や雀焼 きとなります。
水がぬるみ、緑が濃くなる6月下旬、いよいよ蓴菜の採取シーズンに入り、漁は8月中旬まで続きます。

蓴菜沼は恵みの沼

蓴菜の採取舟は往時、幅も長さもふつうの磯舟と同じでしたが、近年いろいろな工夫が凝らされています。舟の長さは約2メートルほど短くなり、雨や日光をし のぐために布付きのビニールでおおいを施し、採取時の腹ばいに心地よいように傾斜をつけて板を張るなど、漁師の苦労がしのばれます。

蓴菜は湖底に根を張り、生長するにつれて湖面にハスのような葉を浮かべ、水中の茎(幹)はところどころに枝を派生させます。幹と枝の二股の部分に大小のぬめりのある新芽がでてきます。この新芽があの珍味な蓴菜です。

蓴菜は爪で摘み採るので、4月ごろから爪を切らず、通常の1.5倍ほどまで伸ばす漁師もいるそうです。女性はカラフルな服装で、頭にはむぎわら帽子をかぶり、利き腕は半袖で、ストッキングに手を加えたものに指だけだして、ひじのあたりまで腕を通すスタイルが定番です。
蓴菜採りは夏の風物詩。7月ごろに大沼を訪れたなら、ちょっと足を延ばして蓴菜沼まで行ってみましょう。カラフルな服装の女性が小舟に腹ばいになって、採取する珍しい様子を見ることができるかもしれません。

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