豊かな恵みのジュンサイ沼
国道5号線へ出て、函館方向へ向かうとまもなく、右手に蓴菜沼へ降りて行く道があります。最初に目につくのは、明治14年9月、明治天皇北海道巡行の記念に建てられた「明治天皇行幸碑」です。
現在、周囲は園地として整備されており、明鏡止水と呼ばれる神秘の沼を静かに堪能できます。
この沼には昔、ハクチョウが多く降り立ち、「白鳥の沼」といわれていました。
現在の名称になったのは、明治5年、北海道開拓使次官黒田清隆がこの地を視察した際のことです。次官は、この沼で良質のジユンサイが多く採れるということ を開き、「しからば、この沼を 『ジュンサイ沼』と称してはどうか」と言われ、以後そのように呼ばれるようになったといいます。
神秘の沼、蓴菜沼は恵みの沼でもあります。春四月、沼の氷が解け、雪解け水で沼が満々と張るころ、ワカサギが産卵のため湖岸にひしめき、大沼の漁師はそれ を捕獲して採卵し、人工孵化を行うとともに、筏焼きに精をだします。やがて、ヌマエビの漁期を迎え、さらにフナ漁へと続きます。小型のフナは甘露煮や雀焼 きとなります。
水がぬるみ、緑が濃くなる6月下旬、いよいよ蓴菜の採取シーズンに入り、漁は8月中旬まで続きます。
蓴菜の採取舟は往時、幅も長さもふつうの磯舟と同じでしたが、近年いろいろな工夫が凝らされています。舟の長さは約2メートルほど短くなり、雨や日光をし のぐために布付きのビニールでおおいを施し、採取時の腹ばいに心地よいように傾斜をつけて板を張るなど、漁師の苦労がしのばれます。
蓴菜は湖底に根を張り、生長するにつれて湖面にハスのような葉を浮かべ、水中の茎(幹)はところどころに枝を派生させます。幹と枝の二股の部分に大小のぬめりのある新芽がでてきます。この新芽があの珍味な蓴菜です。
蓴菜は爪で摘み採るので、4月ごろから爪を切らず、通常の1.5倍ほどまで伸ばす漁師もいるそうです。女性はカラフルな服装で、頭にはむぎわら帽子をかぶり、利き腕は半袖で、ストッキングに手を加えたものに指だけだして、ひじのあたりまで腕を通すスタイルが定番です。
蓴菜採りは夏の風物詩。7月ごろに大沼を訪れたなら、ちょっと足を延ばして蓴菜沼まで行ってみましょう。カラフルな服装の女性が小舟に腹ばいになって、採取する珍しい様子を見ることができるかもしれません。


